建設業のファクタリング|黒字でもお金が足りない理由と、使うべき場面・注意点

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建設業にファクタリングは使えます。むしろ、相性のよい業種の一つです。
理由は、建設業の資金難の多くが「お金が入ってこない」ことではなく、「入ってくるまでに時間がかかる」ことから起きているからです。材料費や外注費、職人さんへの支払いは先に出ていきます。一方で工事代金は、引渡しのあとにまとめて入ってきます。
ファクタリングは、この入金待ちの工事代金(売掛金)をファクタリング会社に買い取ってもらい、先に現金にする方法です。借入ではないので返済はありません。審査では、自社の決算よりも「元請や発注者がきちんと払える会社か」が中心に見られます。
ただし、手数料は銀行融資の利息よりかなり高くなります。公共工事の前払金や融資が間に合うなら、そちらが先です。「融資が間に合わない」「借入の枠が足りない」ときに、工事を止めないための方法だと考えてください。
建設業経営者
ファクタリング会社
建設業の経営者がぶつかりやすい資金難
建設業の資金難は、大きく分けると次の4つから生まれます。どれも経営のやり方が悪いから起きるのではなく、業界の仕組みそのものから来ています。
- 工事代金より先に、材料費・外注費・人件費が出ていく
- 支払いのルールはあっても、入金を待つ期間はなくならない
- 手形がなくなり、支払いの形が切り替わる時期にある
- 人手不足や資材の値上がりで、出ていくお金が増えている
工事代金より先に、お金が出ていく
建設業では、工事を始める前から材料を仕入れ、外注先や職人さんに支払いをします。工事代金が入るのは、工事が終わって引き渡したあとです。
たとえば、1,000万円の工事を請け負ったとします。次の数字はあくまで説明のための仮の例です。
| 時期 | 出ていくお金 | 入ってくるお金 |
|---|---|---|
| 着工前 | 材料費 400万円 | なし |
| 工事中 | 外注費 300万円・人件費 200万円 | なし |
| 引渡し後 | なし | 工事代金 1,000万円 |
この工事の利益は100万円です。しかし、代金が入る前に900万円を立て替えなければなりません。
家計にたとえると、毎月の給料が「3か月分まとめて、3か月後に振り込まれる」ようなものです。年収は同じでも、その間の家賃や食費をどう払うかで困ります。建設業の資金繰りの苦しさは、これとよく似ています。
工事が1本なら何とかなっても、2本、3本と同時に動けば、立て替える金額はその分だけ膨らみます。仕事が増えるほど、手元のお金が減っていくことがあるのです。
支払いのルールはあっても「待つ期間」はなくならない
下請への支払いには、建設業法でルールが決められています。
- 元請は、発注者から代金を受け取った日から1か月以内に、下請へ支払う(建設業法第24条の3)
- 特定建設業者(大きな工事を下請に出せる許可を持つ建設業者)は、下請が工事の引渡しを申し出た日から50日以内に支払う(建設業法第24条の6)
- 手形で払う場合、手形の期間が60日を超えるものは、令和6年11月から指導の対象になった
参照 国土交通省 関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8年2月版)」
このルールは、きちんと守られています。国土交通省が約3万の建設業者を対象に行った令和7年度の調査では、特定建設業者のうち98.7%が50日以内に支払っていました。発注者から受け取ってから1か月以内に払った割合も89.1%です。
参照 国土交通省「令和7年度下請取引等実態調査の結果について」
ただ、ここに見落としやすい点があります。ルールどおりに払われても、「引渡しから最大50日」は待つということです。さらに元請が発注者からの入金を待っていれば、その分だけ下請の入金も後ろにずれます。その間も、次の工事の材料費や職人さんの給料は待ってくれません。
手形がなくなり、支払いの形が切り替わる
建設業では、代金を手形で受け取ることが長く続いてきました。その手形が、まもなく使えなくなります。
全国銀行協会は、2027年度の初めから、電子交換所での手形・小切手の交換を廃止するとしています。紙の手形の交換枚数は、2022年の推計2,468万枚から、2024年には974万枚まで減りました。代わりに増えているのが、でんさい(電子記録債権。手形を電子データにしたもの)です。
参照 全国銀行協会「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた金融界の取組状況について」(2025年11月)
これまで手形を銀行で割り引いて(期日の前に現金にして)資金繰りをしてきた会社は、そのやり方を見直す時期に来ています。支払いが現金やでんさいに切り替われば、手形の割引という手段は使えなくなるからです。
建設業の倒産は過去10年で最も多い水準
帝国データバンクによると、2025年の建設業の倒産は2,021件でした。前の年より6.9%多く、過去10年で最も多い件数です。2,000件を超えたのは2013年以来、12年ぶりです。要因として、人手不足による倒産や、物価高による倒産が挙げられています。
参照 帝国データバンク「『建設業』の倒産動向(2025年)」
東京商工リサーチの年度の集計でも、2025年度の建設業の倒産は2,047件で、前年度より5.3%増えています。
参照 東京商工リサーチ「2025年度(令和7年度)の全国企業倒産1万505件」
建設業経営者
資金が足りないとき、どこからお金を用意するか
建設業の経営者が資金を用意する方法は、主に4つあります。考える順番は、コストの低いものからです。
- 公共工事なら、前払金・中間前払金
- 銀行や日本政策金融公庫の融資
- 元請との支払条件の交渉
- ファクタリング
ファクタリングを4番目に置いているのは、手数料が高いからです。ただ、上の3つには「使えない」「間に合わない」場面があります。そこを埋めるのがファクタリングです。
公共工事なら、前払金・中間前払金
公共工事では、着工前に請負代金の4割を受け取れる前払金の制度があります。さらに工期の半分を過ぎ、出来高が半分以上になるなどの条件を満たせば、2割を追加で受け取れる中間前払金の制度もあります。合わせて6割です。
コストがほとんどかからない方法なので、公共工事を請け負っているなら最初に使いたい制度です。ただし、発注する自治体によっては支払いの上限額を決めている場合があります。また、民間工事や下請の立場では使えません。
銀行や日本政策金融公庫の融資
融資は、ファクタリングより資金を用意するコストが低い方法です。長い目で見た資金繰りを考えるなら、まず取引のある金融機関に相談するのが自然です。
一方で、融資には審査があり、決算の内容や今の借入の状況が見られます。申し込んでからお金が入るまでに時間がかかることも多く、「来週の支払いに間に合わせたい」という場面には向きません。すでに借入が多い会社や、赤字の決算が続いている会社は、希望どおりの金額を借りられないこともあります。
元請との支払条件の交渉
工事の途中で、出来高に応じて代金を払ってもらう(出来高払い)よう交渉する方法です。入金を分けてもらえれば、立て替える金額が減ります。
ただし、交渉できるかどうかは元請との力関係で決まります。「言い出しにくい」「次の仕事に響くのが怖い」と感じる経営者も多いはずです。長い付き合いを考えて、交渉をためらうのは自然なことです。
ファクタリング
入金待ちの工事代金を買い取ってもらい、先に現金にする方法です。借入ではないので、返済はありません。手数料は高いものの、ほかの方法が使えないときや間に合わないときの受け皿になります。
4つの方法を比べると、次のようになります。
| 方法 | お金が入るまで | 返済 | 審査で主に見られるもの | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 前払金・中間前払金 | 契約・出来高に応じて | なし | 制度の条件を満たすか | 公共工事を元請として受けている |
| 融資 | 比較的長い | あり | 自社の決算・借入状況 | 時間に余裕があり、借入の枠もある |
| 支払条件の交渉 | 交渉しだい | なし | 元請との関係 | 元請と話し合える関係がある |
| ファクタリング | 比較的短い | なし | 元請・発注者の支払い能力 | 急ぎの支払いがある、融資が足りない |
【図解指示:上の表の内容を、横軸「お金が入るまでの早さ」、縦軸「コストの低さ」の4象限図にしてもよい。ファクタリングは「早いがコストは高い」位置】
なぜ建設業にはファクタリングが合うのか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
融資とファクタリングは、どちらも「お金を用意する方法」に見えます。しかし中身はまったく別物なのです。
「会社の信用でお金を借りる」ことと、「工事代金の信用で債権を売る」ことは、まったく別のことです。
融資では、自社がお金を返せるかどうかが問われます。ファクタリングでは、その工事代金を払う元請や発注者が、きちんと払ってくれるかどうかが問われます。建設業にファクタリングが合う理由は、この違いにあります。
建設業経営者
ファクタリング会社
審査で見られるのは「払う側」
この考え方は、学術研究でも整理されています。
世界銀行の研究者レオラ・クラッパー氏が2006年に発表した論文では、ファクタリングの大きな長所として、審査が売る側(資金がほしい会社)ではなく、代金を払う側のリスクにもとづいて行われる点が挙げられています。この研究は48か国のデータを使い、ファクタリングが中小企業の資金調達にどう役立つかを分析したものです。
参照 Klapper, L. (2006). The role of factoring for financing small and medium enterprises. Journal of Banking & Finance, 30(11), 3111-3130.(世界銀行による要約)
ただしこれは海外の研究で、主に国ごとの金融の仕組みの違いを比べたものです。日本の個々の会社にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、「なぜ赤字の会社でもファクタリングなら使える場合があるのか」を説明する考え方としては参考になります。
建設業にあてはめると、小さな工務店や一人親方でも、元請が大手や中堅のゼネコン、あるいは国や自治体であれば、その信用を借りる形で資金を用意できる可能性があるということです。
日本の工事代金は「遅いけれど、ほぼ約束どおり入る」
ファクタリング会社にとって大事なのは、買い取った代金が予定どおり払われることです。この点で、日本の建設業は海外と比べて特徴があります。
イギリスの研究者が2022年に発表した研究では、ある下請会社が関わった30の工事、355回の支払いを調べたところ、支払いの46%が遅れていました。遅れのあった工事は全体の77%にのぼり、調査に答えた下請会社の62%が、支払いの遅れで資金繰りに困ったと答えています。
一方、先ほど紹介したとおり、日本では特定建設業者の98.7%が法律で決められた50日以内に支払っています。
| イギリス(研究者による調査) | 日本(国土交通省の調査) | |
|---|---|---|
| 調べた範囲 | 1社の下請会社が関わった30工事・355回の支払い | 建設業者約3万社への調査(集計対象17,756社) |
| 分かったこと | 支払いの46%が期日より遅れた | 特定建設業者の98.7%が50日以内に支払った |
調べ方も規模も違うので、この2つの数字をそのまま比べることはできません。ただ、日本の建設業の悩みの中心が「払われないこと」よりも「払われるまでの時間」にあることは、この比較から読み取れます。
ここからは私見です。払われるかどうか分からない代金は、買い取るのも難しくなります。日本の建設業の工事代金は、入金まで時間はかかるものの、法律に沿ってほぼ予定どおり払われています。その「予定どおり入る代金」を先に現金にするのがファクタリングです。時間のずれだけが問題なら、その時間を買うという考え方は理にかなっていると考えています。
国も建設業向けにファクタリングの仕組みを使っている
ファクタリングを「怪しいもの」と感じる経営者もいるかもしれません。しかし、国土交通省はファクタリングの仕組みを使った支援制度を用意しています。
それが下請債権保全支援事業です。平成22年3月に国土交通省が創設した制度で、下請の建設会社や資材業者が元請に対して持つ代金の債権を、ファクタリング会社が保証します。2022年12月からは、金額が確定している代金をファクタリング会社が買い取る仕組みも加わりました。制度は令和9年3月末まで延長されています。保証料の一部には助成もあります。
参照 国土交通省「下請債権保全支援事業について」、一般財団法人建設業振興基金「下請債権保全支援」
使える会社や条件は取り扱うファクタリング会社によって異なるため、関心がある場合は上のページから確認してください。
注文書の段階で使える方法もある
通常のファクタリングは、工事が終わって請求書を出したあとの代金を売るものです。これに対して、工事を受注して注文書(発注書)を受け取った段階で資金を用意できる「注文書ファクタリング」を扱う会社もあります。
着工前の材料費に困っている場合に使える可能性がある方法です。ただし、まだ工事が終わっていない分、請求書のファクタリングより審査が厳しくなったり、扱う会社が限られたりします。利用する場合は、対応しているかどうかを会社ごとに確認してください。
ファクタリングを使うと、資金繰りはどう変わるか
ファクタリングを使うと、入金までの「待つ期間」を縮められます。その代わりに、手数料の分だけ受け取る金額が減ります。どちらの形で使うかによって、元請に知られるかどうかも変わります。
2社間と3社間の違い
ファクタリングには、大きく2つの形があります。
| 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
|---|---|---|
| 関わる会社 | 自社とファクタリング会社 | 自社・ファクタリング会社・元請(発注者) |
| 元請に知られるか | 基本的に知られない | 知られる(元請の承諾が必要) |
| 代金の流れ | 元請から自社に入金され、自社がファクタリング会社へ渡す | 元請からファクタリング会社へ直接支払われる |
| 手数料 | 高くなりやすい | 低くなりやすい |
| 入金までの早さ | 早くなりやすい | 元請の承諾を待つので時間がかかりやすい |
2社間の手数料が高くなりやすいのは、一般に、ファクタリング会社から見て代金がいったん売る側の会社を経由する分だけリスクが大きいからです。仕組みをもっと詳しく知りたい方は、ファクタリングの仕組みの解説もあわせて読んでみてください。
申し込みから入金までの流れ
一般的な流れを、会話で見てみましょう。細かな手順や必要書類は会社によって異なります。
建設業経営者
ファクタリング会社
建設業経営者
ファクタリング会社
建設業経営者
ファクタリング会社
流れをまとめると、次のようになります。
- ファクタリング会社に相談し、工事代金の内容を伝える
- 契約書・注文書・請求書・通帳のコピーなどを出す
- 審査を受け、手数料の見積もりをもらう
- 条件に納得できたら契約する
- 手数料を差し引いた金額が振り込まれる
- 2社間の場合は、元請から入金された代金をファクタリング会社へ渡す
使う前と後を比べてみる(仮の数字)
先ほどの1,000万円の工事で、引渡しの時点で外注費の支払いが迫っているとします。代金の入金は50日後です。ここでは説明のため、手数料を仮に10%とします。実際の手数料は会社や条件によって大きく変わるので、この数字は相場ではありません。
| ファクタリングを使わない | ファクタリングを使う | |
|---|---|---|
| 今すぐ使えるお金 | 0円(50日待つ) | 900万円 |
| 最終的に受け取る金額 | 1,000万円 | 900万円 |
| この工事の利益 | 100万円 | 0円 |
この例では、外注費の支払いには間に合います。しかし、この工事で得られるはずだった利益100万円が、手数料でなくなってしまいます。
さらに注意したいのは、手数料を年の利率に直したときの重さです。50日分の入金を早めるために10%を払うのは、年の利率に置き換えると約73%(10% × 365日 ÷ 50日)にあたります。ファクタリングは借入ではないので利息とは違いますが、コストの大きさを比べる目安にはなります。
ファクタリングは「利益を削って時間を買う」方法です。だからこそ、次のように「時間を買う価値がある場面」で使うものだと考えてください。
- 支払いが遅れれば、外注先や職人さんとの信頼を失う
- 材料を仕入れられず、次の工事が止まってしまう
- 手数料を払っても、次の工事で利益を取り戻せる見込みがある
法人と個人事業主(一人親方)で違うところ
ファクタリングは、法人だけでなく個人事業主でも利用できる場合があります。一人親方でも、元請に対する工事代金があれば対象になり得ます。
違いが出やすいのは、「債権譲渡登記」という手続きです。これは、代金を譲ったことを第三者に対して主張できるようにする登記で、2社間ファクタリングで求められることがあります。法務省によると、この登記を使えるのは譲る側が法人の場合に限られ、個人は利用できません。
そのため、個人事業主の場合は、登記をせずに取引できる会社や、個人事業主向けのサービスを扱う会社を選ぶことになります。一人親方の場合は、扱う金額が小さいことも多いため、少額から対応しているかどうかも確認しておきたい点です。
一人親方
使う前に確認しておきたい注意点
ファクタリングを使う前に確認しておきたいのは、次の4つです。
- 工事請負契約に「譲渡制限特約」がないか
- 手数料が利益を食いつぶさないか
- 違法な業者ではないか
- そもそもファクタリングが向いている状況か
工事請負契約の「譲渡制限特約」を確認する
建設業ならではの注意点です。工事請負契約には、「この契約で生じる権利を第三者に譲ってはいけない」という決まり(譲渡制限特約)が入っていることがあります。
2020年4月に施行された改正民法では、こうした特約があっても、債権を譲ること自体は無効にならないとされました(民法第466条第2項)。ただし、特約を知っていた相手に対しては、払う側が支払いを拒める場合があります(同条第3項)。
契約書のひな形である標準約款も確認しておきましょう。
- 公共工事の標準約款(第5条):権利を譲るには、あらかじめ発注者の承諾が必要です。ただし、前払金や部分払などを使ってもなお工事に必要な資金が足りないことを受注者が示した場合、発注者は特別な理由がない限り、代金の債権を譲ることを承諾しなければならないとされています。この場合、得た資金はその工事のためにしか使えず、使いみちを示す書類の提出も求められます。なお、この規定は発注者の判断で削除できるため、実際の契約に入っているかは契約書で確認が必要です
- 民間工事の標準約款(甲)(第6条):A案とB案があります。A案は相手の書面の承諾が必要です。B案は、工事を行うための資金を用意する目的であれば、代金の債権を譲ってよいとしています
実際の契約書がどちらの形になっているかは、工事ごとに違います。申し込む前に契約書を確認し、分からなければファクタリング会社に見てもらいましょう。元請との関係に関わる部分なので、自己判断で進めないことが大切です。
手数料は融資より高い。使い続けると利益が減る
先ほどの仮の例で見たとおり、ファクタリングの手数料は利益を大きく削ります。毎月のように使い続ければ、売上は変わらないのに利益だけが減っていきます。
ファクタリングは、資金繰りの「つなぎ」には向いていても、「土台」には向いていません。使った期間のうちに、融資の相談や支払条件の見直しを進めておくと、ファクタリングに頼らなくてもすむ状態に近づけます。
違法な業者を見分ける
金融庁は、ファクタリングを装った違法な貸付について注意を呼びかけています。金融庁によると、たとえば次のような特徴があれば、実質的には貸付(貸金業)にあたる可能性があります。
- 代金の買取価格が著しく低い
- 元請が払えなかったとき、売った側が代わりに払わなければならない(償還請求権がある)
また、手数料が高すぎるとかえって資金繰りが悪化し、借金を重ねてしまうおそれがあること、少しでも心配な点があれば弁護士などに相談することも呼びかけています。
契約書に「償還請求権なし」と書かれているか、手数料の内訳が説明されているかは、申し込む前に確かめておきたい点です。
ファクタリングが向かないケース
次のような場合は、ファクタリング以外の方法を先に考えたほうがよいでしょう。
- 公共工事の前払金・中間前払金がまだ使える
- 支払いまで時間に余裕があり、融資が間に合う
- 工事の利益が小さく、手数料を払うと赤字になる
- 元請の経営状態が不安定で、代金が払われるか分からない
- 毎月の資金不足が続いていて、根本的な赤字が原因になっている
最後のケースでは、ファクタリングは問題を先送りするだけになりかねません。
建設業に合ったファクタリング会社の選び方
ファクタリング会社を選ぶときは、手数料の安さだけでなく、建設業の取引に対応しているかどうかを見ることが大切です。次の5つを確認してください。
- 工事代金の債権を扱った経験があるか:工事請負契約や出来高払いの仕組みを理解している会社のほうが、話が早く進みます
- 注文書ファクタリングに対応しているか:着工前の資金が必要な場合に確認します
- 個人事業主・少額に対応しているか:一人親方の場合は特に重要です
- 契約書に「償還請求権なし」と明記されているか:違法な業者を避けるためにも欠かせません
- 2〜3社から見積もりを取る:手数料は会社と条件によって大きく変わります。1社だけで決めると、比べる基準がありません
当サイトでは、選び方の考え方にもとづいておすすめのファクタリング会社3社を紹介しています。また、簡単な質問に答えて、自社に合う会社を探せる診断も用意しています。見積もりを取る先を絞り込むときに使ってみてください。
よくある質問
元請に知られずに使えますか?
2社間ファクタリングであれば、基本的に元請に知られずに利用できます。ただし、工事請負契約に譲渡制限特約がある場合や、ファクタリング会社が債権譲渡登記を求める場合は、扱いが変わることがあります。契約書を用意して、ファクタリング会社に相談してみてください。
赤字決算や借入が多くても使えますか?
使える可能性があります。ファクタリングの審査では、自社の決算よりも、代金を払う元請や発注者の支払い能力が中心に見られるためです。ただし、審査の基準は会社ごとに違うため、審査に通らないこともあります。
公共工事の代金も売れますか?
売れる場合があります。ただし、公共工事の標準約款では、代金の債権を譲るのに発注者の承諾が必要とされています。まずは前払金・中間前払金を使えないかを確認し、それでも足りない場合に発注者へ相談するのが順番です。
一人親方でも使えますか?
個人事業主に対応しているファクタリング会社であれば、使える可能性があります。個人は債権譲渡登記を利用できないため、登記をせずに取引できる会社を選ぶ必要があります。
2026年から手形払いが禁止されたと聞きました。建設業も対象ですか?
2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法。下請法を改正した法律)では、対象となる取引で手形による支払いが禁止されました。ただし、建設工事の下請は取適法の対象外で、建設業法のルールが適用されます。一方で、建設会社が行う取引でも、資材の製造委託や運送の委託など工事以外の取引は、取適法の対象になる場合があります。
参照 国土交通省 近畿地方整備局「下請法は取適法へ 改正ポイント説明」
まとめ
建設業の資金難の正体は、「代金が払われないこと」ではなく、「払われるまで待つ時間」でした。
日本の建設業では、下請への支払いが建設業法でルール化されていて、その多くが守られています。それでも、材料費や外注費、人件費は工事代金より先に出ていきます。仕事が増えるほど立て替えが膨らみ、黒字なのに口座のお金が足りなくなる。建設業の経営者が抱える悩みは、ここから生まれています。
ファクタリングは、この「待つ時間」を手数料で買う方法です。審査の中心は元請や発注者の支払い能力なので、決算の内容や借入の状況で融資が難しい会社でも、使える可能性があります。
一方で、手数料は融資より高く、使い続ければ利益を削ります。公共工事の前払金や融資が使えるなら、そちらが先です。そのうえで、「今この支払いを乗り切れないと、工事や取引先との信頼が止まってしまう」という場面では、ファクタリングは有力な選択肢になります。
もし今、月末の支払いに不安があるなら、まずは工事の請負契約書と請求書を手元にそろえてください。そのうえで、診断で自社に合う会社を絞り込み、2〜3社から見積もりを取って比べてみましょう。
建設業経営者
ファクタリング会社
参考資料
- 国土交通省 関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8年2月版)」
- 国土交通省「手形期間の短縮について」
- 国土交通省「令和7年度下請取引等実態調査の結果について」
- 全国銀行協会「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた金融界の取組状況について」(2025年11月)
- 帝国データバンク「『建設業』の倒産動向(2025年)」
- 東京商工リサーチ「2025年度(令和7年度)の全国企業倒産1万505件」
- 国土交通省 関東地方整備局「資金繰り対策」
- 国土交通省「下請債権保全支援事業について」
- 一般財団法人建設業振興基金「下請債権保全支援」
- Klapper, L. (2006). The role of factoring for financing small and medium enterprises. Journal of Banking & Finance, 30(11), 3111-3130.
- Bolton, S. et al. (2022). Late payment to subcontractors in the construction industry. Journal of Legal Affairs and Dispute Resolution in Engineering and Construction, 14(4).
- 法務省「債権譲渡登記制度とは?」
- 民法第466条(債権の譲渡性)
- 国土交通省「公共工事標準請負契約約款」
- 国土交通省「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 国土交通省 近畿地方整備局「下請法は取適法へ 改正ポイント説明」



