建設業や建築業は他の業種と比べ資金繰りが悪化しやすい業種と言われています。その理由は「売掛金の回転率が悪いため」です。
この問題の解決方法はシンプルです。売掛金の回転率を良くすればよいのです。
そのため、たとえば今まで工事が終わってから払ってもらっていた売掛金を、工事の前、中、後と言った具合で複数回に分けて受け取るようにすれば良いのです。
最近では、多くの現場ではこのようなシステムとなっています。ただしそうではないところもあることでしょう。その場合、「交渉すること」、そして「新しい受注先の発掘」することで、会社の資金繰り問題が改善することでしょう。
売掛金の回転率が悪い建設業界
冒頭でもお話ししたように、建設業や建築業は他の業種と比べ資金繰りが悪化しやすい業種と言われています。
その理由は「売掛金の回転率が悪いため」です。
売掛金の回転率とは売掛金を回収できる期間のこと
売掛金の回転率とは、売掛金を回収できる期間のことを言います。
たとえば小売業であれば約12回ですが、建築業においては約3.3回と4倍ほどの開きとなってきます。この3.3回という数字ですが、これは1年間で回収できる売掛金の回数を示しています。日数で表すと約107日に1度、売掛金を回収するということになります。
何かモノを売ってから、その代金が入ってくるまでに100日以上必要となるわけです。
そしてこれはあくまでも平均的な数字です。建設現場の規模などによってさらに回転率が悪くなってしまう可能性は十分にあります。
さらに建設業の場合、取り扱う金額が他の業種に比べ大きくなりやすいという傾向があります。そのため売掛金が1回でも入ってこない、もしくは入金のトラブルがあるだけで大きな損失となってしまうのです。
そして仕事を受注した段階で材料を仕入れなければなりませんし、必要であれば下請けに仕事を振ることにもなります。つまり材料を仕入れる費用や外注費が先払いで発生するわけです。それを自己資金で立て替えることになります。
下請け業者もそうです。仕事を受注した際には材料費を建て替える必要があります。
つまり工事が完成する前に大きな金額の出費をしていて、工事が完成しなければお金が入ってこない状態に陥ってしまうのです。前払いでいくらかもらうことはできますが、限度があります。
このようにして建設業は資金難に陥りやすく、資金繰りや資金調達の問題を抱えやすいのです。
産業別 | 回転期間 | 回転率 |
---|---|---|
建設業 | 107.88日 | 約3.3回 |
通信業 | 74.19日 | 約4.9回 |
卸売業 | 73.78日 | 約4.9回 |
農業 | 61.59日 | 約5.9回 |
小売業 | 28.23日 | 約12回 |
少しの利益のために受注することもある
大きな金額を動かしているとイメージできる建設業者ですが、少しの利益のために受注することもあります。
固定費や従業員の給料を支払うために、儲けの少ない工事を受注することは普通にある話です。
また親会社から振られた仕事で儲けが少ないとしても、その後の付き合いがあるため渋々受注するというケースもあります。
工事を進めるために先出しすることも
たとえば1000万円の仕事を受注したとします。材料費が500万円必要であり外注費が400万円必要だったとしましょう。つまり合計900万円は先にお金を出さなければならないわけです。
工事が完成したら1000万円入ってきますが、先に900万円を出しているため、差し引き100万円が会社に入ってくることになります。
つまり会社としての利益を100万円得るために、900万円先にお金を出さなければ1000万円の仕事を受注できないということになるのです。
本来であれば断りたい仕事ではあるかもしれませんが、仕事がない状況やその先の仕事につなげるためにも本来であれば断りたいと考える仕事も受けることはあります。
従業員の給料などの固定費を支払うためにも受注しなければならないのです。また外注業者との繋がりを保つためにも必要なことなのです。
このように1000万円の仕事というと大きな金額のように思えるかもしれませんが、その内訳はこのようになっており、大変厳しいものとなるわけです。
さらに相見積もりを取ってこられる場合には、他の業者よりも低い金額を提示しなければならないこともあります。本来は10%の利益を取りたいところですが、3%や5%と低い利益率で受注することもあります。
社員を遊ばせないために望まない仕事を受注することも
仕事がなければその間、社員が遊んだ状態になってしまいます。つまり社員のレベルが伸びないことに繋がってしまいます。
そのため望まない金額だったとしても仕事を受注するケースがあります。
もちろん赤字になるような金額で受注することはないのですが、売り上げは低くなってしまいます。
ただそれでも社員のレベルを伸ばすことができますし、社員のレベルが伸びることで将来的にレベルの高い仕事も受けやすくなることでしょう。
仕事を振ってくれた取引先との関係も強化することができます。その辺りのことを考慮すれば、決して損ではないのかもしれません。
売掛金の入金を複数回に分けるよう交渉する
建設業界の売掛金回転率が悪くなる原因は、「商品の完成までにかかる時間が長い」ということが原因です。
飲食店であれば、食事を提供したらその帰りに食事代金を受け取ることができます。しかし建築業の場合、工事が完成するまでに時間がかかり、その後、その工事代金が入金されることとなります。数週間、数ヶ月、場合によっては数年に渡って売掛金が入って来ない可能性があるのです。
その間必要となる人件費、そして工事をするために必要な材料費などは、自分の会社から捻出しなければなりません。つまりかなり体力のある会社でなければ、工期の長い仕事は受注できなくなってしまうのです。
そのために金融機関などから資金調達をするという方法も考えられるのですが、そこでもう1つ懸念材料があります。それは「工事が終わったら本当に売掛金が支払われるのか?」ということです。
売掛金を支払う元となる親会社が万が一ですが、倒産でもしてしまった場合、本来支払われる金額の一部しか受け取れなくなってしまう可能性があります。もしくは全く受け取れない問い可能性すらあるのです。
このような事態は絶対に避けなければなりません。親会社の倒産の影響でその下請け会社も一緒になって倒産してしまうことになります。
そのためにも、たとえば工事が終わってから6000万円の売掛金が入ってくる予定だった場合には、初期の段階で2000万円、中期で2000万円、工事完成後に2000万円と言った具合で工事代金を支払ってもらえれば、会社の経営を保つことができます。
建築業者はファクタリングを頻繁に利用する
工事代金の入金のタイミングを複数回に分けることで、売掛金の回転率をあげることは、会社の経営を保つために有効な方法です。
しかしそれでも資金繰りの悪化に直面しやすいのが建設業界です。やはり1つの案件での扱っている金額が大きいということも影響しているのかもしれません。
そのようなときに有効な資金調達としてファクタリングがあります。ファクタリングであれば、最短即日で資金調達をすることが可能です。持っている売掛債権を売却し資金調達をするため、金融機関からの融資とは異なり返済は必要ありません。
また何かしらの都合で金融機関から資金調達できないという事業者であっても、ファクタリング会社に売却する売掛債権さえあれば資金調達することができるのも魅力です。