はじめに結論を言いますと「売掛債権(売掛金)は売却することができます。」
つまり取引先から「まだ受け取っていない代金をもらう権利は売却することができる」ということです。前提として分かりやすく説明しておきますが、売掛債権と売掛金は同じ意味です。
そして売掛金を売却することで資金調達をすることができるのです。つまり資金調達の方法というのは、金融機関からの融資、助成金、ローンだけではないということです。
売掛金を売却し資金調達する方法を「ファクタリング」といいます。2019年現在では、ファクタリングサービスを行っている会社は日本に100社以上あるとされています。
売掛金を売却し資金調達できるといった画期的な金融施策ですが、それ以外にも「早ければその日のうちに資金調達を完了することができる」といった大きな強みもあるのがファクタリングなのです。
Contents
売掛金を売却し資金調達するファクタリングとは
売掛金は将来的に入ってくる売り上げです。そのため待つことさえできれば売掛金は入ってきます。つまり売掛金とは、取引先からまだ受け取っていない代金をもらう権利のことをいいます。
売掛債権 取引先から受け取っていない代金をもらう権利のこと。 | |
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売掛金 取引先から受け取っていない代金を現金でもらう権利のこと。 | 受取手形 取引先から受け取っていない代金を手形でもらう権利のこと。 |
この「取引先から受け取っていない代金をもらう権利」は売却することができます。権利というものは売ることができるのです。
そして売掛金を売ることができるサービスをファクタリングと言います。
事業者
つまり売掛債権も売掛金も、受け取っていない代金を請求できる権利のことなんだ。ただし分かりづらいため、売掛債権も売掛金も、「まだ受け取っていない代金」という認識で扱われることがある。
※この先文章を簡略化するため、売掛債権と売掛金は同じという認識で説明していきます。
売掛債権と売掛金は同じもの
売掛債権と売掛金は同じと考えてよいでしょう。
そしてこれらは、取引先からまだ受け取っていない代金をもらう権利です。つまり売掛債権と売掛金には、代金分の価値があるということになります。
「価値のあるもの」であるため、当然欲しがる人はいます。売掛債権を欲しがるのがファクタリング会社というわけです。
手数料をもらって売掛債権を購入する
ファクタリング会社は事業者から売掛債権を購入します。その際、手数料を引きます。この手数料がファクタリング会社の利益となります。
ファクタリング会社
たとえば事業者が100万円の売掛債権を持っていたとします。つまり売掛金が100万円あるということですね。ファクタリング会社にもよりますが、手数料として約10万円が引かれます。手数料を引いた90万円を事業者は現金で得ることができます。
つまり資金調達ができたということですね。
ファクタリング会社としては事業者から売掛債権を購入した時点では90万円のマイナスとなります。しかし将来的には、といっても数ヶ月後の話ですが、購入した売掛債権分の100万円が入ってくるため、差し引き10万円の利益となるわけです。
参照 ファクタリングの仕組み
なぜ売掛債権を売却する事業者はいるのか?
ファクタリング会社に売掛債権を売却してしまっては、手数料が引かれてしまいます。そのためベストな方法としては、売掛先から売掛金が入金されるのを待った方が良いに決まっています。
しかし、いち早く売掛債権を現金化しなければならない状況にある事業者もいるのです。
繰り返しになりますが、売掛債権や売掛金は、代金を得ることのできる権利を持っているだけです。実際に売掛金を手にするまでにできることは、ただ待つことだけです。
待っている間にも、会社の資金はどんどん減っていき、資金が必要となる事業者は少なくありません。
よく考えたいポイントとしては、利益が確定しているわけではないため、たとえば売掛先が倒産でもしてしまったら売掛債権は何の価値もなくなってしまいます。
このように何かしらの事情で「今すぐ売掛金を現金として手に入れる必要がある」という事業者にとって、ファクタリングというサービスは有効な方法といえます。
事業者
すぐに資金調達できる方法は意外と少ない
すぐに資金調達できる方法は意外と少ないというのを知っていましたか?
資金調達する方法としてはいくつか考えられるのですが、「すぐに」というと「ビジネスローン」か「ファクタリング」のどちらかが考えられます。どちらにもメリットデメリットがあるのですが、大きな違いとしては「借金かどうか」という点と「売掛金があるのかどうか」という点です。
ビジネスローン 借金であり倒産後も返済の必要あり
ビジネスローンはローンですから「借金」となります。担保や保証人(第3者の保証人)は必要とならないケースがほとんどですが、事業者自身を保証人としなければならないケースが多いです。
そのため、万が一会社が倒産してしまった場合でも、保証人である「元」事業者が借金の返済をし続けなければなりません。
ただし、売掛金が無い状態でも利用することができます。
参照 ビジネスローンについて
ファクタリング 借金ではなく倒産しても責任なし
一方ファクタリングの場合は「借金ではありません」。借金ではないため返済もありません。はじめに手数料が引かれるためです。
そのため、万が一会社が倒産してしまった場合でも、何の責任も負う必要はありません。
ただし売掛金がなければ利用することができません。
参照 ファクタリングについて
ファクタリングは売掛金の範囲内でしか資金調達できない
ファクタリングは借金ではありません。取引先から未回収の代金を受け取る権利をである売掛債権(売掛金)を売ることで資金調達する方法です。
つまりファクタリングは「売掛債権がなければ利用することができません」。また「売掛債権の金額内でしか資金調達できません」。借金と勘違いをする人がいますが、お金は一切貸してくれません。貸金業ではないためです。
そのため、たとえば100万円の売掛金があったとします。その場合、100万円以下であればファクタリングで資金調達が可能となります。しかしそれ以上の金額が必要だという場合には、ファクタリングを利用することはできません。
事業者
ファクタリング会社
事業者
ファクタリング会社
事業者
ファクタリング会社
このようにファクタリングは、売掛債権の金額内でしか資金調達はできません。それ以上の金額が必要ということであれば、他の資金調達を探すしかありません。
ただしたとえばですが、500万円の資金が必要だったとします。持っている売掛債権は100万円だったとします。一部ファクタリングで資金調達して、後は他から調達するといった使い方をする事業者は多いです。
どんな売掛金でも売れるわけではない 入金される見通しのある債権のみ
ファクタリング会社は喉から手が出るほど売掛債権が欲しい状態です。しかし持ち込まれた売掛債権をすべて購入するわけではありません。買い取れる売掛金と買い取れない売掛金があるのです。
ファクタリング会社
これはファクタリング会社から見ての話です。
ファクタリング会社は売掛金を購入する際には、必ず審査をおこないます。さまざまなポイントを審査するわけですが、とくに大事なポイントとしては「この売掛金は本当に価値のあるものなのかどうか」という点です。少し言い方を変えますと、「売掛先は売掛金を支払う能力があるのかどうか」という点がファクタリング会社にとって重要となってくるのです。
ファクタリング会社
売掛先の信用が大事
売掛金を事業者から買い取ったとします。しかし売掛金を支払うはずの売掛先が何かしらのトラブルで売掛金が入ってこなかったとしましょう。ファクタリング会社は大きな損害を被ってしまいます。
事業者に対して「買い取った売掛金が入ってこなかったから、以前渡したお金返して」とは言えないのです。ファクタリングの契約する際には、償還請求権がない(ノンリコース)の契約であることが一般的であり、それが契約の中に盛り込まれているためです。
参照 償還請求権について
このようなことが無いように、売掛先に支払い能力があるのかどうかを審査で判断します。
売掛先の支払い能力を確認するために
売掛先に支払い能力があるのかを確かめる方法の1つとして、今までの取引履歴を確認することで、ある程度確認できます。つまり継続的な取引のある取引先であれば、お金の動きは通帳に継続的に記録されており、それは取引先の信頼度を高める一つの材料となるのです。
審査の際に通帳のコピーを見せてもらうことで、「この売掛先は今までしっかりと売掛金を支払っているな。信用のおける会社だな。」と判断できるわけです。
ファクタリング会社
売掛債権は偽造されていないか 債権の偽造は詐欺に該当することも
偽造された売掛債権はファクタリング会社は購入しません。何の価値もないためです。ただ事業者に対し、お金をあげるだけになってしまいます。
数は少ないのですが、時折、売掛金(売掛債権)を偽造する事業者が中にはいます。偽造した売掛債権をファクタリング会社に売却し、現金だけ持って逃げてしまうのです。もちろんこれは詐欺行為です。
ファクタリング会社も素人ではないため、大抵の場合、審査で見抜くのですが、それをすり抜けてしまうこともあるのです。それにより大きな被害を被ってしまい、ファクタリング会社が経営の危機に陥ってしまうこともあります。
また、詐欺行為を行なった事業者の中には、多くの借金を抱えているケースがあります。借金返済のためにファクタリングで資金調達をするため、何とかして本人とコンタクトを取ることができたとしてもお金がなく、結局ファクタリング会社が損をしてしまうということになるケースもあります。
そのようなことがないように、売掛金が偽造されていないかどうかも審査のポイントとなります。
参照 売掛債権の偽造について
ファクタリング会社
不良債権は相手にされない
偽造された売掛債権と同様、不良債権もファクタリング会社が購入することはありません。利益を上げられる可能性がかなり低いためです。
ファクタリングに関する不良債権の話として2パターンあります。
- 売掛債権を持ち込んだ事業者が不良債権と分からずに持ち込んでいる。
- 売掛債権を持ち込んだ事業者が、不良債権だと分かって持ち込んでいる。
この2つには大きな違いがあります。
もし不良債権だと分かって持ち込んでいるとなると、これは詐欺行為に該当する可能性があります。何の価値もないものを相手に買わせようとしているためです。ファクタリングの場合であれば、ファクタリング会社が損失を出すと分かっている状態で売掛債権を売却しようとしているわけです。
万が一ですが、ファクタリング会社が不良債権を購入したとします。その結果、事業者は儲かったと喜んでいるかもしれません。しかしそれで終わりではありません。被害を被ったファクタリング会社は高確率で法的手段に出ます。私自身法律の専門家ではありませんが、「初めから騙そうとしていた」「結果騙してお金を取った」わけですから詐欺関連の罪に該当することでしょう。また損害賠償も発生するかもしれません。
いずれにせよ、不良債権をファクタリング会社に持ち込むことは絶対に避けた方が良いと思います。
売掛金を売却し資金調達するのがファクタリング
まとめますと、売掛金(売掛債権)を売却し資金調達することはできます。それをファクタリングといいます。ファクタリング会社は約100社以上あり、まともな売掛金であれば、どこでも買取の対象となることでしょう。
まともな売掛金というのは、たとえば「偽造された売掛金ではない」とか「二重譲渡されたものではない」とかを指します。
参照 二重譲渡
またファクタリング会社にも、売掛債権を購入するときの条件があります。
- 事業者が法人なのか個人事業主なのか
- 売掛先が法人なのか個人事業主なのか
- 売掛金の金額はいくらなのか
- 売掛先との基本契約書
ファクタリング会社毎にルールが決められています。
ただし前述した通り、日本には数多くのファクタリング会社があります。まともな売掛金(売掛債権)であれば、買い取ってくれる会社は存在することでしょう。
※文中、売掛金と売掛債権を同じ意味として使用していることがあります。
よくある質問
売掛金は売ることができるのか?
可能です。売掛金があるということは売掛債権があるということです。売掛債権はファクタリング会社に売却することができます。
売掛金はどのくらいの時間で現金化できるのか?
ファクタリングの場合、早ければ即日で現金化することができます。ただし審査に必要な必要書類が揃っていること、週末の遅い時間でないことが条件となるケースがあります。
どんな売掛金でも売れるのか?
ファクタリングを利用する際には必ず審査が必要となります。審査の通過率は90%以上とされているため、審査を受けることさえできれば大抵の場合売却可能です。しかし不良債権の場合は、購入してくれません。