ファクタリングの知名度が広がるにつれ、関連の問題が発生するようになってきました。もしかすると、以前より問題は発生していたのかもしれませんが、最近になりそれが目立ってきたように思えます。
ファクタリングの世界で真っ先に思い浮かぶ問題は「給与ファクタリング」です。最近、さまざまなメディアで取り上げられています。良い意味ではなく悪い意味でです。当サイト内でも何度も給与ファクタリングに触れてきています。当サイトとしても給与ファクタリングは利用すべきではないという姿勢です。
当サイトとしては、ファクタリングの利用自体は資金調達の1つの方法として選択肢に入れてよいと思っています。しかし給与ファクタリングの利用に関しては否定的な考えです。
知らない人もいるかもしれないのですが、ファクタリングと給与ファクタリングは全くの別物です。
仕組みは似ています。しかし根本的に異なる部分があるのです。
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ファクタリングはBtoB 給与ファクタリングはBtoC
ファクタリングと給与ファクタリングの違いは簡単に言ってしまうと、BtoBなのかBtoCなのかという点です。
ファクタリングはBtoBであり、給与ファクタリングはBtoCです。一般的に言われているファクタリングとは「事業者向けのサービス」なのです。事業者しか利用することができません。事業者というのは法人や個人事業を経営している代表のことです。つまり社長です。
しかし給与ファクタリングは事業者以外の人を対象としています。つまりサラリーマンや契約社員、派遣社員、アルバイトなどです。法人事業者も厳密に言えば自分の経営する会社から給与をもらっているため、対象になります。
まずここで大きな違いがあるのです。
ファクタリングは売掛債権を売却すること
そしてもう1つ最大の違いがあります。それは、本来ファクタリングというのは売掛債権をファクタリング会社に売却することにより売却益を得ることです。売掛債権とは売り上げをもらう権利です。売掛金とも言います。
売り上げをもらう権利があるということは、取引先に商品やサービスを納品、提供したということです。
このように考えると、一般サラリーマンが売掛債権を持っているでしょうか?持っていませんよね。売掛債権は持っていないのですが、給与債権は持っています。とはいえ、ファクタリングは売掛債権を対象としたサービスです。なので給与債権は対象外なのです。
無理やりこじつけているだけ
ところが、給与ファクタリングというものが世の中に出回り始めました。給与ファクタリングのサービスを提供している会社の言い分は以下の通りです。※憶測が入っています。
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却するものである。売掛債権は売り上げをもらう権利である。つまり将来的に必ず入ってくるお金である。
給料に関しても同じだ。会社に勤めていれば来月、再来月と、勤めている限り毎月給料が入ってくる。つまり給料をもらう権利を持っている。将来的に必ず入ってくるお金であるわけだ。
つまりファクタリングでも給与ファクタリングでも、「将来的にお金をもらうことのできる権利をファクタリング会社が購入する」という意味合いからすると変わりがない。
ということなのです。
確かにその面だけを見てみると、「そうかもしれない」と納得してしまうかもしれません。
しかし忘れてはならないことは、上記した2点です。
- ファクタリングとは事業者が利用するサービス
- ファクタリングとは売掛債権を売却(譲渡)するサービス
確かにシステム的にも似ているように思えますが、この2点は該当していません。
給与ファクタリングは貸付に該当と金融庁が発表
いままで一般的なファクタリングと給与ファクタリングが同じであるとか違うものであるとか、いろいろ意見が出ていました。
そんな中、2020年3月に金融庁が「給与ファクタリングは貸金業に該当する」という見解を示しました。東京地裁においても「給与ファクタリングは貸付に該当する」という認定がされました。また日弁連でも「金銭の貸し付けに該当すると考えられる」という声明が出されました。
国、裁判所、日弁連の3つが統一した見解となっているわけです。ここまで来てしまった状態でこれらの意見を覆すのはなかなか難しいことでしょう。
ただし注目してほしいことは、これらは給与ファクタリングについての見解であり、一般的なファクタリングについて触れているわけではわけではありません。つまり一般的なファクタリングと給与ファクタリングは異なったものであるという見解だと理解できます。もし同じであればわざわざ「給与ファクタリングは・・・」とは表現しません。
参照 金融庁の回答文書
参照 日弁連の会長声明
収入に不安を抱えた人の利用が増えている
なぜ最近になり、給与ファクタリングの話が数多く出てきたのか。それはファクタリングの知名度が上がったということも理由の1つではあるのですが、世界的経済悪化のために収入が減ってしまった人たちが数多くいるという点も拍車をかけたことでしょう。
事業者であれば、持続化給付金である程度まとまった資金を得ることができます。たとえば法人であれば最高200万円までが給付され、個人事業主であっても最高100万円が給付されます。
さらに日本政策金融公庫では、無担保無保証(期限あり)で融資をしています。その他の金融機関でも同じように融資を行っているところもあります。
これにより事業の規模にもよりますが、比較的事業者にはお金が給付されているのです。
参照 2020年世界的経済悪化の中での資金調達は今までよりも審査が緩いがリスクも
ところが一般的なサラリーマンは一律10万円の給付で終わっています。10万円は確かに大金かもしれませんが、普通に生活を送っていたらかなり早い段階で無くなってしまいます。
そして職場では給与額が下げられたり、賞与のカットがされてしまったりという状況下。となれば、生活費をどこかで工面する必要があります。
そんなときに知名度の上がってきたファクタリングを知れば、そして即日でお金を手にすることができると分かれば、それなりに利用者が増えることは容易に想像が付きます。
何よりも、ブラックリスト等で他の貸金からお金を借りられない状況の人でも、給与ファクタリングであればお金を出します。ある意味、ギリギリの人たちの救いとなってしまっているわけです。
自分を守るためにも給与ファクタリングの利用は避けよう
当サイト内でも再三言っていることですが、自分を守るためにも給与ファクタリングの利用は避けた方がよいでしょう。
もし利用すれば、お金を手にすることができるかもしれません。しかし以上に手数料が高いです。20万円の給与債権を持ち込んだとして、15万、もしくはそれ以下の金額しか手にすることができません。
また1度利用しただけで止まるでしょうか?何度も何度も繰り返してしまうのではないでしょうか?
そうでなければ、一般的な貸金の方でブラックリストになっている可能性は低いはずです。
毎月給与ファクタリングを利用した場合、毎月給与が低くなった状態と同じことになってしまうのです。これは負のループです。
世の中おいしい話はなかなかありません。もし利用を考えているのであれば、もう一度よく考えてみてください。
2020年9月30日 日弁連の定例会見 ファクタリングについての言及
2020年5月22日に、日弁連から給与ファクタリングについての声明が出されたことを前述しました。
そして2020年9月30日、日弁連の定例会見にて給与ファクタリングや事業者向けファクタリングに対しての取り締まり強化について言及しました。これによると、5月、6月に取り締まり強化を発出し注意喚起を行ったことにより、被害が減少したとのことです。
確かに私の知る限りでは、ある給与ファクタリングを積極的に取り扱ってきたファクタリング会社のホームページが閉鎖され、噂ではサービスも停止したとのことです。全く何もない状態でサービスを停止することはないはずですので、何かしらの影響があったと推測されます。その会社は、給与ファクタリングにおいてはかなり有名な会社だったため、これが原因で被害数が減ったということがあるのかもしれません。